国際線第99ターミナル

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日本と韓国のミュージカル観劇あれこれ

2013/9/9&9/14 Next to Normalレポ

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2009年度トニー賞3部門制覇、2010年度ピューリッツァー賞に輝いたブロードウェイミュージカル、ネクストトゥーノーマルを観てきました!今回日本初上陸だそうです。
内容は精神病をわずらった母を持つ家族の話。
最初あらすじを見た時は原因不明のまま家族がどんどんおかしくなっていくサイコサスペンス的な話かと思ったのですが、原因はわりと序盤で明かされ、それをどう解決するかをメインにおいたストーリーでした。
一家にスポットをあてた作品なので世界観はこじんまりとしてますが、身近で起こらないとは言えない日常的な怖さがあります。
そしてあれですよ、2回見たくなる系ミュージカルです!
見てる最中爆発的な楽しさがあるわけではないのですが、帰り道でじわじわ、寝る前にまたじわじわ。
あそこのセリフの意味は?結果がああだったってことは、あのシーンのあの人の行動はどういうことだったんだ?と確かめたくなっちゃうことが後からぼろぼろ。
そして2回目に行くと、そこで新たな疑問点を発見し更に確かめたくなってしまうスーパー複雑泥沼作品でした。(いまここ)

ネタバレあり感想に入る前に座席について書いちゃいます!
舞台セットが3階建てと高さがあるので、おそらく5列以内位だと3階が見切れます。
初回を3列目で見たのですが、3階で座られると髪の毛しか見えませんでした。笑
ただ見切れてもストーリー進行に影響はないシーンなので、気にならなければ問題ないと思います。
7~11列あたりが、全体も表情も肉眼で観れて良いかもしれません。
2回目を9列で観ましたが、ステージと同じくらいの高さでとても見やすかったです!

以下ネタバレありの感想になります。

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劇場に一歩足を踏み入れると目一杯飛び込んでくる今回の舞台、ホーンテッドマンション三階建ての家セット。
客席から3フロア同時に確認できるので、複数の人物が同じタイミングで何をしているか一気に観ることが出来る面白い作りです。
このステージセットの中をキャストが所狭しと駆け回ったり乗り出したり。
小西ゲイブなんてうっかり手をはなしたら遠心力で客席まで飛びそうな勢いで、なかなかスリリングでした。

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【ダイアナ 安蘭さん・シルビアさん】
運よくWキャスト両方観ることができました。ラッキー!
ダイアナは歌も動きもとにかくパワフル。
突然パンを床にしき敷き詰め始めるシーンも、あまりにもノリノリ&リズミカル&ナチュラルだったため、家族が「え!?」という反応をするまで、それが異常事態だということに気づかなかったくらいのファンキーさ。
この勢いのおかげで、重いテーマであるにも関わらず、最後まで暗い気持ちにならずに観られるのかもしれません。
安蘭ダイアナは張り詰めてた糸が切れたような狂い方、シルビアダイアナはドカーン!と爆発的な発狂。
個人的には歌は安蘭ダイアナ、キャラのハマり具合はシルビアダイアナが好みでした。
安蘭ダイアナの音で圧倒するような歌い方は最高にかっこいいし、言動が非常にアメリカンなミュージカルなので、シルビアダイアナのハジけた演技はまさにドンピシャ。
2人とも甲乙つけがたい素敵なダイアナだったので、観に行くときは公式動画を参考に演技や歌の好みで選んでしまっていいと思います。本当にどちらも良かったので!重要なゲイブとの関係については2つ下の「ゲイブとは」で改めて。

【ゲイブ 小西さん】
本作重要キャラクターである息子のゲイブ。なんと既にお亡くなりになってました。設定は18歳ですが、小西ゲイブは精神年齢12歳位じゃないかと思わせるような子供っぽさ。
子供が無邪気なのは普通ですけど、大人の無邪気は狂気しか感じません。笑
いつでも人懐っこくありながら、ふとした瞬間に恐怖の存在となるゲイブ。
小西ゲイブはそのあたりの表情の使い分けが絶妙で、最初は明るく話しかけたり、励ましたりと、ダイアナを慰めてくれる存在なのかと思ったら、途中から執拗にまとわりついてきたり、自殺に引きずり込もうとしてきたりで、1回目観た時は本気で悪霊かと思いました。
だって突然白のタキシードで登場してダイアナとゆったり踊った後、手首をグッと握ったと思ったら「ダイアナ、手首に多数のカミソリ痕、自殺未遂~」って・・・こええーーー!!!!笑
後半しばらくゲイブが出てこないシーンがあるのですが、「お願いだからもうでてきませんように」と祈りましたw
とにかく自分を忘れさせようとする人間への敵意があからさまで、ダンやDrマッテンを睨む視線が、眉間にシワよりまくりの憎悪ダダ漏れ!目が全然笑ってない笑顔が恐怖です!
他にも思い出してくれた人への執着もすごくて、最後のダンとゲイブのシーンは私のミュージカルトラウマシーン集に新たな1ページを刻むことになりました。
自分の存在を認めてくれたダンに抱きついた時の表情が必死すぎるというか、切実すぎて、きっと藁でもすがりたい人はおそらくこんな顔で藁にすがるんだろうな!
文章で説明するなら「汗ダラダラで目全開 with 瞬き0の笑顔」みたいな。
「Next To Normalへようこそ!!」みたいな。(通じない)
しかし2幕では怖さと悲しさが並行するところも見どころで、オルゴールを見つけたダイアナに、ハミングしながら優しく近づいてくところは、そこまでの演技が激しかったぶん寂しくて切なかったです。ここのシーン好きすぎて脳内エンドレス再生したい。

【ゲイブとは】
しかしゲイブって一体何なんでしょう?
1回目に観劇した時は、ダイアナの記憶を飛ばそうとするドクターに猛反発したり、思い出のオルゴールを置いたりと、自分の意思で動いてる様に見えたので、ゲイブ本人の幽霊なのかと思いました。
でも現実としてゲイブは生後8か月で亡くなってるので、本人の意思がそもそも存在しないんですよね。
なので今作に登場するゲイブはダイアナの妄想に基づいた幻覚なのかなと思いました。
死んだという事実に向き合って受け入れない限り、ダイアナの中でゲイブは成長し続けるし、いつでもそこにいる。それを具現化したのが舞台にいるゲイブ!みたいな。
そして前述したドクターやダンに対するゲイブの敵対心は、ダイアナの潜在意識がそのまま反映されてるのかなと。

うわー!何が何だか自分でわからなくなってきました!
観劇前はまさかこんなにゲイブが重要かつ難解人物だとは夢にも思いませんでした!笑
観た人の数だけ解釈がありそうです。ゲイブ奥深し・・・。

【ダン 岸さん】
最後の最後にわかる衝撃の事実。ダンにもゲイブが見えていた!
これは超予想外です!いつからみえてたの!?
ずっとダイアナの看病で手一杯だったけど、彼女がいなくなった今、初めて自分自身がゲイブの死にきちんと向き合う余裕ができたのかな?
そう考えると最後のシーンで初めて見えたことになりますが、ダンが見たゲイブも大人ゲイブなんですよね。
ダイアナが18歳って言ってたからそのイメージなのかなぁとか、今までも見えてたけど見えないフリをして息子の死から目を逸らし続けてたのかなぁとか、無意識でゲイブを意識してたのかなぁとか、とりとめもない疑問を最後の最後にドシャぶらせてくるN2N。なんて構成なんだ!最初からダンに注目してもう1回みたくなるじゃないか!(ちゃぶ台返し

1番わからなくなるところは、ダイアナが去り際に見つめてたゲイブに、そのままダンが「お前はついていかないのか」って話しかけるところ。
え!?ダイアナが見てたゲイブと同一のゲイブに話しかけたの!?って思ってしまうと、最初の幽霊説が再浮上してくるという・・・このあたりはもうちょっと悶々とする必要がありそうです。笑
岸さんは真面目で一生懸命なのに、すべて空回りしてしまうダンのキャラクターをリアルに演じられてました。
優しそうないいお父さんで、だけど一番肝心なところで空気が読めないみたいな。なんというリアリティw

【ナタリー 村上さん】
「スーパーボーイと透明のガール」という歌詞がまさにナタリーの置かれてる状況をよく表してますね!
最初は「透明のガール」意味がよくわからなかったんですが、「invisible girl」という英語歌詞を見てしっくりきました。
今でも家族の中心にいるのは十何年前に死んだはずの兄で、自分ではない。
村上ナタリーは気が強そうながらも寂しさが見え隠れする、10代特有の不安定さをこれまたリアルに演じられてました。
しかし歌は超安定で上手!声の出し方がちょっとポップスっぽい?そこがまたナタリーに合ってました。

【ヘンリー 松下さん】
今作品のサンクチュアリ松下ヘンリー。
ある意味修羅場の大連続なので、出てくると「安全地帯キターー!!」とホッとします。
ナタリーだけでなく家族も含め、普通じゃないことを理解したうえですべて受け入れてくれるなんて、現代人になかなか期待できる対応じゃないですよね!ヘンリーなんていいやつなんだ!
「僕と踊ろ(→)おhh(↑)~~~~♪」をはじめとした裏声のビブラート加減が上手すぎて気になります。笑

【Drファイン/Drマッテン 新納さん】
1作品で2度出オチるという、出オチの常識を覆した新納ドクター。
最初に登場する役は、Drファインというガリ勉系のお医者さん。
ビン底メガネに七三分け、真顔で淡々と薬の説明をし続けるその姿はまさに出オチ!本人はいたって真面目なので表情は1回も変わりません。じわじわきます。

そして中盤から登場するDrマッテン。
黒シャツ&黒スーツに金髪オールバックといういでたちは、ドクターというよりどうみてもホスト。(出オチ2回目)
しかもクールキャラかと思いきや、口を開いた瞬間突然照明がコンサート風になり「HEEEEEEEEEEEEEEY!!」とロック風シャウト!
その後何事もなかったかのように普通に話し始めるので、今の何だよと観客爆笑。
2日目に行った時は「もうロックスターに見えない先生~」と言われた後、1テンポおいてからダイアナを高速2度見というギャグが追加されてました。
笑いのツボの抑え方が完璧です。笑

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今までの感想もまとまってませんでしたが、今回は飛びぬけてひどくなってしまいました!
書きながら「ああ、まだきっと50%も理解できてないんだろうなあ」と思いつつ、でもそこがまた面白いです。
最初はストーリーの展開にただただ驚きながら観て、2回目でようやく考える余地ができてきたところでしょうか。
又見る機会があれば、次回は絶対にダンとゲイブに注目して観たいと思います。
そしてあわよくば意味ありげに変わってた衣装の色もちゃんと意識しながら観たいです!