トムの仮想インタビュー
ザミュージカル2月号に、"アルヴィンの葬儀を終えたトムに対するインタビュー"なんていう神コーナーが!
トム役の俳優がトムとして質疑応答するという、これぞまさに公式が最大手。(この言葉をここまで実感を持って噛み締めたことが未だかつてあるだろうか。いや、ない。多分)
俳優さん個人の見解なので公式とはまたちょっと違うかもしれませんが、発案した人にひれ伏して崇め奉りたいくらいの神企画ですありがとうございます。
内容も真面目でとても良かったので、 いくつか質問を抜粋して引用してみました。
ネタバレしてますのでご注意ください!
●記者:あなたの友人であったアルヴィンの葬儀の弔辞が大きな話題となりました。アルヴィンはどんな友人だったのですか?
▲トム:私にインスピレーションを与えてくれる友人でした。最も親しい、親友でした。
●記者:あなたの初めての小説である「蝶」がありますよね。アルヴィンにもこの作品を見せたんですか?
▲トム:「蝶」は大学入試を控えて書いた短編小説です。アルヴィンに初めてその話を読んだ日が、今も鮮やかに思い出されます。いつも一緒に遊んでいた本屋で、おそるおそる小説について打ち明けました。アルヴィンが良いといえば小説と入学願書を出すつもりでしたし、あんまりと言えば出さないつもりだったんです。私はアルヴィンの能力を信じていました。もしアルヴィンがあんまりと言ったらどうしよう?と内心かなり心配だったりもしましたけど。
私が一文一文読んでいく度、アルヴィンは「続けて?」と言いましたが、様々な考えが頭をよぎりましたね。
「蝶」を読み終えアルヴィンを見ると、初めて見る表情をしていて。
彼はシンプルに、「送りなよ」と言いました。
アルヴィンは、私の最初の読者でした。
●記者:それであなたは入学することになったのですね。アルヴィンは小さな本屋を引き継いだと聞きましたが、それでは2人はやむを得ず離れていたのでしょうか?
▲トム:はい、アルヴィンは故郷に残り、私は街へ出ました。
私たちにはたくさんの思い出がありますが、初めて離れた時が、最も記憶に残っています。悲しかった。
出会い、別れることは誰もが経験することなのに、その時はなぜあんなに大変だったのか。。
●記者:弔辞ではアルヴィンの言葉を話されていましたね。特に「全てのことは一瞬で変わることができる。ほこりのように小さな事件で」という一節が非常に印象深かったです。
あなたの人生を変えた小さな事件には、どのようなものがありましたか?
▲トム:本当にたくさんの瞬間がありました。
アルヴィンと初めて出会った日、トムソーヤの冒険を読み、読書感想文を書きながら作家になることを決意した瞬間、大学入試のために「蝶」を書いた瞬間、アルヴィンを街に招待して、結局は来ないでくれと言った瞬間まで。
自分でも気づかないうちに過ぎ去った小さな瞬間こそがまさに「ほこりのように小さな事件」だと思います。
結局、私の人生を決定的に変えたのは、とても些細な瞬間でした。
●記者:アルヴィンが亡くなる前、彼の父親が亡くなったと聞きました。さらにアルヴィンは、新聞にあなたが父親の弔辞を書くと、広告まで出したそうですね?
▲トム:プレッシャーでした。アルヴィンの私にかける期待が・・・。卑怯な言い訳をするなら、そのプレッシャーのせいで書くのが難しくなったりもしました。
●記者:それでは、あなたのスランプの原因の1つはアルヴィンだったのですか?
▲トム:率直に言えば・・・はい。アルヴィンは、私が文章を書くことが、自らの人生の理由になっていたようでした。それが負担で、避けたこともありましたね。
ところが実際、スランプの最大の理由は「私の書いた物語の主人公は誰なのか?」という考えだったのです。
●記者:アルヴィンにあなたの状況を素直に話したとすれば、理解してくれたのではないでしょうか?
▲トム:私がアルヴィンにスランプだと話したとしても、彼は理解できなかったでしょう。
私が書けないという状況をアルヴィンに説明するには、たくさんの話が必要でした。
しかし、おそらくアルヴィンは私の文を読みながら、すでに危うい私の状況を知っていたんだと思います。そうです、彼は全て知っていたんです。
●記者:アルヴィンは本当に自殺したと思いますか?
▲トム:まだ信じられない話です。アルヴィンが橋の上からそんな・・・。
ああ、アルヴィンの知らせを聞いて、本屋に行きました。
信じ難いと思いますが、私はそこで再びアルヴィンを見たんです。
アルヴィンは私に、「見ていないことは、わからないんだよ」と言いました。
私は、「素晴らしき哉、人生」のジョージのように橋から飛び降りたアルヴィンも、天使クラレンスが連れて行ったのだと思います。
●記者:もうアルヴィンに会うことはできないでしょう。
あなたは葬儀以降、彼と一緒に育った本屋に行ったことがありますか?
▲トム:葬儀を終えて、再び家に戻り日常を送っていたのですが、突然ふとアルヴィンの本屋を思い出しました。
自分でも気づかないうちに車を運転し、本屋に行ったんです。
本屋に入ると、不思議なことに涙は出ず、2人の思い出が蘇りました。
アルヴィンはそこを、読者と本をつなぐツールであり、媒介であると言っていました。他の人が見れば、ただの田舎の小さな本屋ですが。
私は幼かった頃のように、床に座り込んでまじまじと本屋を見回しました。
私たちの思い出が浮かび上がり、ゆっくりと思いに浸って。
今でも時々、アルヴィンのことを思い出したら本屋を訪ねます。