国際線第99ターミナル

国際線第99ターミナル

日本と韓国のミュージカル観劇あれこれ

2017/12/16 & 2018/1/3ミュージカル「ファンレター」

fanlet.png

ほのぼの家族ものだと思ってたら、スリリングなミステリー作品だったー!
最初に提示された結末から遡っていく構成で、次どうなるの!?どうなったの!?!?ととにかく続きが気になり、気づいたら口半開きで瞬きも忘れるくらい没頭して見てしまいました。
観た後にポスターを見たら「こういうことだったのか・・・(白目)」って見る前と 全然印象が変わるんです。。
2017年マイベストミュージカルTOP3にあげる勢いで面白かったです

↓以下、結末以外のあらすじというか見たままの流れを書いてますのでネタバレにご注意ください。また文中のセリフ部分は雰囲気で書いてますのでそちらもご注意下さい。↓

 

【プロローグ】
時は1930年代。
街では人気作家ヘジンが恋人と心中したらしいという噂が流れている。
ヘジンが残した最後の手紙を求め、主人公は生前の彼とのやりとりを遡っていく・・・。

【生前の話】
主人公は文学大好きな作家志望の少年セフン。
大好きな作家ヘジン先生にファンレターを出します。

plr1.png

 

それを読んだヘジン先生。

plr2.png

その後、もろもろの事情でセフンは文化人が集う「七人会」でお手伝いをすることに。
1930年代ということで、日本の植民地時代&治安維持法や検閲が猛威を振るってた頃でしょうか。七人会のメンバーは肩身が狭いながらも、互いに励まし合い野心的に活動してました。
そう、そこでセフンはついに出会ってしまったのです。憧れのヘジン先生に!

plr3.png

感激のあまり、小さいこと1つ1つに馬鹿みたいに涙が出ちゃうセフン。
「電気消しといて」とか言われても全力で喜びそうな浮かれっぷり。
この恋い焦がれるような憧れ、トキメキっぷりときたら、女子校で先輩に憧れる新入生みたいです!
ここの曲のもらいトキメキでがすごくて、寝顔覗き込むところなんてトキメキすぎて鼻血出るかと思いました。

その後、手紙を出すために郵便局に行こうとするヘジン先生。
何を送るのかと聞いたところ

plr4.png

 

plr5.png

予期せぬ超展開。
そう、セフンの「ヒカル」というペンネームを見て、ヘジン先生は女性だと思いこんでたのです。
確かに伊集院光は男だけど宇多田ヒカルは女性ですしね!
やっかいな日本人名を選んでしまったもんですよ。

 

plr6.png

もしもヒカルさんに会えた時の妄想ことを夢見心地で歌うヘジン先生。の後ろで青ざめてるセフン。
自分のファンレターが想定外にヘジンの心の支えになっていたことを知って、言いたくても言い出せない状況に。
そしてその状況を1ミクロンも知らないヘジン先生。おわかりいただけますでしょうか、誰も悪くないのに最悪な状況です。

セフンは誰も傷つかずに済むよう、ヒカルという人物をあたかも実在するように作り上げることに。

plr7.png

再び文通を始めるセフン、もといヒカルとヘジン先生。
幸か不幸かセフンはかなりの文才があるらしく、ヒカルとして書いた小説を送ったところ、それに偉く感動したヘジン先生が勝手に雑誌に載っけてしまい、ヒカルの存在が世間広くに知らせることになってしまいました。ヘジン先生なにやっとんねん!w
しかもさらにヒカルにぞっこんになってしまったヘジン先生は、返事がこないと飲んだくれて「何も書けない・・・」と廃人予備軍になる始末。仲間たちもヒカルの正体を気にし始めます。

良かれと思ってついたウソが大ごとになってしまい、途方に暮れたセフンは、ヒカルの提案でヘジン先生に1人部屋にこもって合作を書くよう仕向けます。
手紙のやりとりをする中で、セフンはヘジン先生が重度の結核を患っていて先が長くないことを知り動揺しますが、「私も同じ病気にかかっていて、だから会うことができない」とすぐにヒカルの設定に応用。それを聞いて「どこまで似てるんだろう!?」と余計に感激するヘジン先生。
「誰にも会わずただ文字を書いてさえいれば、私はあなたのそばにいる」というヒカルの言葉に、ヘジン先生は死の恐怖も忘れて一心不乱に小説を書き始めます。

plr8.png

もうこのシーンのこじらせ方と言ったら、もはや心理ホラー。ジョングヘジンの笑顔が狂気。
そして何より状況を知ってる観客まで、手紙を通して本当に彼女が横にいるような感覚に陥ってくるのがすごいです!
でも曲も歌詞も激しいながらも幻想的で、何よりあのおだやかなヘジン先生が内面にこれだけの死への恐怖と孤独を隠し持ってたのかと思うと泣けました。共感してくれるヒカルの存在がどれだけ唯一の光になってるのかと。
しかしはたから見れば完全に孤立してるし、自暴自棄だし、芸術家のそれは完全に死亡フラグですよ!
このシーンでは次々にヘジン先生に絡むヒカルとセフンが入れ替わるのですが、ヘジン先生は何も気づきません。ヒカルしか見てないから。

ここにきて独占欲を覗かせる歌詞を口走るセフンですが、自分が作り出した実在しない人物とどんどん遠くに行ってしまうヘジン先生に気づき、最後にふと我に返ります。

plr9.png
ヘジン先生どころか原稿までも自分の手に残らず、セフンは茫然と舞台上に立ち尽くす。

ここまでが1幕でした。
・・・続きはネタバレなので劇場で!と言いたいところですが残り1週間で千秋楽なうえに全公演完売という無慈悲な現実が。えーん!どうしてペンレター終わってしまうの?

2幕ではヒカルの言う通り部屋に引きこもり、日々悪化する症状に息も絶え絶えな中、小説を書き続けるヘジン先生。
そんな彼を見てられないセフンと、死ぬ直前の作家が生み出す傑作を見たいヒカルが対峙して結末をむかえます。

冒頭でヘジン先生は死んだことが明らかになっているので、最後の最後までどうなるの!?どうなったの!?と前のめりで見てしまいました。結末から真相をたどってく系のストーリーはやはり面白いですね!

また作品の世界観&登場人物の感情にヒッタヒタに浸したような音楽が激流のごとく客席を引きずり込んでくるので、見てる時の没入感がすごい!感情描写も素手で心を揺さぶるような細かさなので、油断すると感情移入しすぎます。字幕あるからと予習0の余裕ペーペーで行った結果揺さぶられに揺さぶられ、休憩時間中涙が止まらなるという未知の経験をしました。こんなに途中休憩で泣いた演目は初めてです!

とにかく思ってた以上の良作っぷりに、大学路小劇場群は宝探しの最前線だなと真顔で思いました。
それではお決まりの言葉で締めたいと思います。せーのっ
もう一回観たい!