国際線第99ターミナル

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日本と韓国のミュージカル観劇あれこれ

2021/4/7スリルミー福士成河ペア感想

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2018年は彼をも凌駕するサイコっぷりで客席を恐怖に陥れた成河私。今回は感性がより一般人に近づいたといいますか、彼に翻弄される心の流れが感じやすく、より共感して楽しめるキャラクターになっていました!
そして福士彼は頭のいい私をもってしても予測できない全速前進&操縦不能っぷりで、着地点がわからないまま転げ落ちてく怖さ。サスペンス色強めが好きな方にはがオススメのペアです!
(※前回の感想はこちら
(※今期にろまりペアの感想はこちら

以下、ネタバレ満載の感想になります。

【審議会】
表情から声まで、全てが古ぼけたような成河私53歳。
落ち着いて話しているのですが、何回も動機を聞かれることに苦笑したりと少し辟易してる模様。考えながらゆっくり話す、頭が良さそうな印象です。
審議官とも対等な態度で話しているのですが、対等どころか時々

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(※イメージです)

【優しい炎】
触ってくださいを渋々不本意そうに言うも、触られたら逆に「え!?本当に触ってくれたの!?」と驚く成河私。彼からの塩待遇に慣らされてる香りがします。
炎鑑賞も最初は乗り気じゃなかったのに、いつのまにか炎に魅せられてうっとり。(このいつのまにかウッカリが以後繰り返される)
最後に彼がいなくなるとき、私は前方の炎を惚れ惚れするような表情で見ていたのですが、振り返って彼がいないことに気づいた後も静かに微笑んだままでした。
(座席の関係で私が振り返り切ったところまで表情が見えたんですけど、彼がいないのがわかってもなお暗転するまで微笑んだままでした。最後の瞬間だけ、現代の私が当時を懐かしんでるようで切ない。。)

【契約書】
福士彼、すでに超人になる気満々MAXでご機嫌。
(福士彼の感情はご機嫌/不機嫌/死にたくないの3種類が発見されています。)
「お前がいなきゃダメなんだ」の時の

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無言で催促する感じが謎に面白くてツボです。
私はこの曲でもニーチェや血の契約書に呆れた声でコメントしてたのに、いつのまにか勢いに飲まれて真剣に契約書を作成。
しかし福士彼のナイフの扱いときたら、あんな切り方したら指がホットドック挟むパンみたいになっちゃうよ!

【計画】
成河私、彼の殺人計画を全然信じません。
彼は真面目に話してるんですが、私はずっとジョークをあしらうようなおちゃらけた話し方で、ターゲット候補に「弟」があがってくるまでは真剣に冗談だと思ってそうでした。
はいはい殺人ワロタワロタ( ´Д`)な成河私と、大真面目に殺人計画を語りまくる福士彼。カオス。
そんな感じで全然私は真に受けてなかったのに、いつのまにか彼の勢いに流され、どんどん犯行の詳細が決まっていき、気づいたら実行の準備をさせられてる流れは恐怖!
そこからの戻れない道は、置かれた状況に戸惑う私の心境が歌詞とぴったりで、動機はただ彼と一緒にいたかったこと、どうしてこうなったかわからないこと、54歳の私が犯行を後悔してること、全てに感情を伴った説得力と一貫性が生まれたように感じました。

最後の「そう信じてた」だけ声色が寂しげに変わったんですけど、ここでもまた53歳の私が当時の心境を歌っていたようですごくよかったです。年齢のグラデーション!


【超人たち】
現実感がないのか、リュックを抱き抱えたまま呆然と無表情で立ち尽くす成河私。

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彼と手を握り合わせて「超人〜」って歌う顔の必死っぷりときたら、もうこれは洗脳というか新興宗教みがあります。
私がハイハイで前に進み出てくるところがあるんですが、あまりにも顔が取り憑かれてるのでステージが切れてもそのまま空中を突き進んでくるんじゃないかと思う勢いでした。

【僕の眼鏡】
事件のニュースを見ても取り乱さず、無表情で呆然と彼に電話をかける私。(魂行方不明)
この曲は2人のテンションはもちろん、成河私の歌のオクターブが急上昇・急降下するので、先の見えないジェットコースターに乗ってるようなハラハラの疾走感があります。え!そこで上がる!?次は!?歌わないで叫ぶの!?ぎゃー!!みたいなw
しかし超人たちからずっと呆然としてるし、彼に「お前だけだ」と言われた時、目玉が落っこちるんじゃないかと思うくらい目を見開いて驚いてたので、故意で彼をハメてるような計画性が感じられません!
一方福士彼は最初は余裕しゃくしゃくでしたが、死体の身元がバレた頃から「全部お前のせいだ!」といわんばかりに、電話の向こうにいる私を睨みつけながら保身コースを爆進してました。
ガニ股で新聞めくったり、滝汗状態で取り乱す彼のかっこ悪さは見どころです!

【思い出せない】
彼「俺が弁護士だ」←私絶句(貴重な爆笑ポイント)
ここでもやはり渋々従い始めたのに、いつのまにか真剣に彼の演技レッスンを受けている私。
肝心の本番では警察との会話タイミングが噛み合わなかったり、返事が遅れたりと、集中力が切れ気味だったのでした。

【公園バトル】
彼の手があるはずの場所に手を伸ばしたら何もなく、そのまま自分の肩を握ってグググと何かを堪える私。
このシーンでもまだまだ彼に従順なのに、容赦なくバサバサ切り捨てられてく姿は見てて可哀想!
本当にどうしてこうなってしまったのか、私視点の戻れない道リプライズの説得力が異常です。

【留置所&死にたくない】
福士彼、勢いよく投げ入れられてドア枠に激突してスピンしながら入場。
僕と組んでで謝罪の言動を取ってますが、表情がどうみてもその場しのぎのハリボテです。
死にたくないでは叫びまくる彼の傍、口をパクパク動かしながら顔を背ける私。ここまできてもしんどそう。

【99年】
最高の弁護士をまるで自分が雇ったかのようにドヤ顔で語る福士彼。(数少ない爆笑ポイント2)

私のネタばらしは笑顔。
ここだけ見ると私が勝ったようにみえるけど、これまでの流れを思い出すと引きずり回された末に、捨て身で反撃したようでもあります。
99年の最後に彼が消えた後、笑顔が崩れてどんどん泣きそうな顔になるのを見たら、最初からこの状態を目指して計画を進めてきたとは思えませんでした。

そんなこんなで途中で断れなかったこと、こんな事件が怒らなければどんなによかったかと思うこと、審議会で話した反省の言葉には嘘がないように聞こえました。
「あんなことが起こらなければどんなによかったか」みたいなセリフ、いつも「人事か!」って思っちゃうんですけど、今回は彼に押し流された感が強かったので理解できた気がします。
同時に私が彼との思い出をすごく大事にしてるのも伝わってきてたので、ソンフクなのに切ない気分になってしまいました。(2年前の自分に言っても絶対信じてもらえない)

最後は53歳の私から彼への「待ってたよ」。
長い年月、恵まれた環境、全てを無くしてもなお彼への想いだけは変わらない。唯一の動機。
そんな印象を受けたラストでした!


【雑談:資本主義の病ってなんだ】
(以下は実際の事件とは切り離して、作品としてのスリルミーのみを前提に書きます!)

このペアは「資本主義の病」がテーマだそうですが、正直なところまずこの言葉の意味自体が難しくてよくわからない・・・!
自分なりに作品と照らし合わせて考えた結果「資本主義社会の考え方が生む弊害」のことかな?という結論に漠然と至りました。

成河私を見てて、最初からずっと「ただ彼と一緒にいたかった」と本当の動機を話してるのに、審議官に最後までまったく理解されませんでした。
資本主義社会では成功のイメージがかなり固定化されてて、裕福、高学歴、高い地位・・・これに当てはまる私と彼は側から見たら恵まれた成功者。
結局、社会的に成功してるなら、愛や家族関係だったりは些細な問題であり、輝かしい人生を破壊してまでこだわるものでないはずという固定概念が無意識のうちにあるのかも・・・?
返せば、愛や家族関係等のお金では測れないものの欠如は、社会的な成功を潰してまで苦しむほど人間が生きる上で根本的な問題なのに、一般的にそうは理解されていない。

世間は「何不自由なく恵まれてるのに、どうして?」と好奇の目で眺め、メディアも犯人の経歴や、事件の残忍性等、世間の興味を惹くセンセーショナルな部分ばかり注目して面白がる。
結局表面的なところだけ取り立て事件は埋もれ、背景も動機もよく理解されないまま、犯人も税金の無駄を理由に釈放。
そして今日もまた似たような事件が次々と起こり続ける。

自由だけど利害に基づいて考えすぎて、人間に不可欠なものまで同じ天秤にかけてしまう。
それが資本主義の病なのかなと思いました。

ぴえん、言語化するのがむずかちい!w意味不明だったらごめんなさい!

公式から教えてもらわなければ思いつかなかったフレーズですが、このようにキーフレーズをもらって新しい観点から見るのは面白い体験でした!今までで1番審議会の会話をよく聞いた気がしますw